金毛の羊皮 12 ― 2022年08月03日
(一二) 約束の日
翌日(あくるひ)夜の白(しら)むのを待って、ヤソンは海水で身を清めた後、全身に霊膏(れいこう)を塗り、又楯と兜と武器にも塗って、約束の仕事にかかる準備を終ったので、先ずこの霊膏の魔力を試すために、人々に頼んで、四方から武器を投げつけて貰ったが、槍も、剣も、ヤソンの楯に当るや否や、まるで鉛のように切尖(きっさき)が曲ってしまうばかりか、ヤソンの体は地から生えたように、何が触ってもびくともしなかった。其処(そこ)で、日が昇ると、王宮へ使いを送って、支度(したく)の出来たことを通じさせると、勇士らがあの難題に胆を潰して、昨夜のうちに逃げ帰ることと信じていた王は、意外な顔をして、その使者の口上を聞き取った。
「後悔するようなことはあるまいな!」と王は皮肉らしく念を押した。「異国から来た人々に、悲惨(みじめ)な最期を遂げさせるのは、わしの本意でない。どうだ、もう一度考え直しては?」
「日が昇りました。あなたの約束を履行して下さい。」と使者が答えた。「我々に竜の歯を渡して、火焔を吐く牡牛(おうし)を解放して下さい!」
王はこの返事を聞くと、直ぐに竜の歯を使者に渡して、アレスの野へ一同を案内させた。
程なくアレスの野は人を以て埋(うず)まった。その一方には王の玉座を囲んで、コルキスの勇士が、半円を描(えが)き、一方にはミニヤ族の勇士が、兜の星を朝日に輝かしつつ整列した。
その時ヤソンは今日の選手として、野の中央に進み、剣(けん)と槍を取って地に突き刺し、兜を脱いで槍に掛け、上衣(うわぎ)を脱ぎ棄て、楯を執って突立(つった)ち上がった。其処にはもう黄銅の軛(くびき)と、鉄の犂(すき)が用意してあった。王は臣下に命じて、牛舎(うしごや)の門を開かせると、二頭の牡牛は、恐ろしい吼え声を先立(さきだ)てて、黄銅の蹄を地に踏み鳴らしながら、鼻の孔から焔を吐いて、疾風のようにヤソンを目がけて跳びかかって来た。見る間に、ヤソンの身は、二頭の牡牛の吐く火焔の中に包まれたが、その髪の毛の一筋も焦がされずに、楯を控えて突立(つった)っていた。群衆は野を包む砂烟(すなけむり)を透(とお)して、ヤソンが楯をかざして、突きかけて来る四つの角を受留(うけと)めたと見たが、次の瞬間には、二頭の牛は、もう脚を折って、地へ這っていた。
これを見て、敵も身方(みかた)も、一斉に歓呼の声を挙げた。けれども誰一人、王の側(そば)に立った王女メデアが、すっぽりと被ったヴェールの中で、熱心に呪文を唱えていたのに、気がつかなかった。
ヤソンはやがて牡牛の頸に黄銅の軛(くびき)を掛け、重い鉄の犂(すき)へ縛り付けて、後から槍で突きながら、暴風(あらし)のように猛り立たせて、見る間にアレスの野を犂(す)き返した。それから牡牛を犂(すき)から離して、元の牛舎(うしごや)へ追い返した後、竜の歯を出して、畝(うね)の間へ蒔いて行った。暫くすると、畝は一本一本に膨れ上がって、土の塊が一つ一つに人間になり、頭の先から足の爪先まで鋼鉄で包まれた武士の姿になって立上がると、手に手に武器を揮(ふる)って、ヤソンを目がけて突進して来た。
之(これ)を見てミニヤ族は覚えず手に汗を握ったが、ヤソンは少しも騒がず、いきなり槍の先にかけた兜を取って、武士の群がった中へ投げてやった。すると沢山の武士は、忽ち狂気のようになって、同士討ちを始め、暫くの間は入乱れて戦っていたが、終(つい)には一人残らず地に倒れて、再び畝の中へ吸い込まれてしまった。
ヤソンはミニヤ族の歓呼に送られながら、アイエテスの前へ進んで、約束の羊皮を請求した。その時王は眉を曇らして、腹立たしげにヤソンの顔を眺めた。
「それは明日にして貰いたい、今日はもう遅い!」
こう言うや否や、つと玉座から立上がって、直ぐに王宮へ帰って行った。
第百三十一段 ― 2022年08月03日
・「Goodbye Pork Pie Hat」に関しては、歌詞を附けて歌われているヴァージョンも複数あるとの事。インストゥルメンタル曲に後から歌詞が付くことはままあるが、歌詞に複数のヴァージョンがあるのは比較的珍しいと思う。
作詞者は、ローランド・カーク(Rahsaan Roland Kirk)、ジョニ・ミッチェル(Joni MItchell)
など。
・個人的には「大工の源さん」より「コロポックリの源さん」の方が馴染み深い。一度解決してからも、何度もプレイしたものである。おもにBGM聞きたさに。無論、ゲームのサントラCDも持っている。個人的には「高田馬場 栄通りのテーマ」が好き。