イソップ「子供と榛実」楠山正雄訳2023年04月30日

子供と榛実(はんのみ)

 子供が榛実(はんのみ)の入つてゐる壷に手を突込んで、掌(て)の中に掴めるだけ掴んだ。けれどその拳を固めたまゝに抜かうとすると、どうしても脱けない、その筈だ、壷の口は至つて狭いのだから、どうもそんな大きな握り拳(こぶし)の通るわけはないのである。掴んだ榛実(はんのみ)を離すのは厭、かといつて手は抜けず、子供はじれて泣き出した。その様子を見た母親が、子供に
「坊や、まあ、そんなに欲張るものではないよ。その半分だけで我慢をおしなさい、さうすればわけもなくその手はぬけるのですよ」
と云ひ聞かせた。

【訓言】一度に慾を張ると損をする。



・「榛実(はんのみ)」とは榛(はしばみ)の事。手許の辞書に「榛(はん)の木(き)」と言う言葉はあったが、「はんのみ」と言う言葉は見当らなかった。他でも目にした記憶は無い。

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