第六十七段 ― 2022年02月10日
続々・第五十四段 ― 2022年02月11日
(前略)又或る日、鼻の所にて「フルヘッヘンド」[野上註 verheffend(lifted up, raised.)]せしものなりとあるに至りしに、此語わからず。これは如何なる事にてあるべきと考〔へ〕合〔ひ〕しに、いかにもせんやうなし。其頃「ウォールデンブック」(釋辭書)といふものもなし。やうやく長崎より良澤求め歸りし簡略なる一小册ありしを見合〔せ〕たるに、「フルヘッヘンド」の釋註に、木の枝を斷ちたる迹、其迹「フルヘッヘンド」をなし、又庭を掃除すれば、其塵土聚〔ま〕り「フルヘッヘンド」すといふ樣によみ出〔だ〕せり。これは如何なる意味なるべしと、又例の如くこじつけ考ひ合ふに、辨へ兼〔ね〕たり。時に、翁[引用者注 玄白自身]思ふに、木の枝を斷(き)りたる跡癒〔ゆ〕れば堆くなり、又掃除して塵土あつまればこれもうづたかくなるなり。鼻は面中に在りて堆起せるものなれば、「フルヘッヘンド」は堆(ウヅタカシ)といふことなるべし。然れば此語は堆と譯しては如何といひければ、各々之を聞〔き〕て甚だ尤〔も〕なり、堆と譯さば正當すべしと決定せり。其時のうれしさは、何にたとへんかたもなく、連城の玉をも得し心地せり。(後略)
杉田玄白『蘭學事始』(野上豊一郞校註)より、お馴染み(?)「フルヘッヘンド」のくだり。〔〕内は校註者。
校註者は野上彌生子の伴侶(配偶者)。英文学者であり能楽研究者でもあるそうだ。才長けた夫婦である。
なお、実際には『ターヘル・アナトミア』の原書に「フルヘッヘンド」という単語は無いそうだ。同義語はあるらしいが。いやはや。
杉田玄白『蘭學事始』(野上豊一郞校註)より、お馴染み(?)「フルヘッヘンド」のくだり。〔〕内は校註者。
校註者は野上彌生子の伴侶(配偶者)。英文学者であり能楽研究者でもあるそうだ。才長けた夫婦である。
なお、実際には『ターヘル・アナトミア』の原書に「フルヘッヘンド」という単語は無いそうだ。同義語はあるらしいが。いやはや。
第六十七段の補足 ― 2022年02月13日
米軍も派兵(増派?)しているようだ。
ここでTVドラマ『コンバット!(Combat!)』テーマ曲の楽譜でも挙げたい所だが、レナード・ローゼンマン(Leonard Rosenman、1924年-2008年)の原曲、三木佑二郎の日本版「コンバット・マーチ」共に著作権は存続しているので掲載出来ない。序でに言えば、ドラマの前日譚である「D-Day」を描いた映画『史上最大の作戦(The Longest Day)』(1962年)のテーマ曲を作詞・作曲したポール・アンカ(Paul Anka、新兵として出演も)の著作権も存続している。あとは米国陸軍の曲と言えばこれ位しか知らない。『ジョニーが凱旋する時』パトリック・ギルモア(Patrick Gilmore、1829年-1892年)。
ここでTVドラマ『コンバット!(Combat!)』テーマ曲の楽譜でも挙げたい所だが、レナード・ローゼンマン(Leonard Rosenman、1924年-2008年)の原曲、三木佑二郎の日本版「コンバット・マーチ」共に著作権は存続しているので掲載出来ない。序でに言えば、ドラマの前日譚である「D-Day」を描いた映画『史上最大の作戦(The Longest Day)』(1962年)のテーマ曲を作詞・作曲したポール・アンカ(Paul Anka、新兵として出演も)の著作権も存続している。あとは米国陸軍の曲と言えばこれ位しか知らない。『ジョニーが凱旋する時』パトリック・ギルモア(Patrick Gilmore、1829年-1892年)。
調性は短調だが、歌詞を見ると出征兵士の生還を願う家族の歌である。『草枕』の那美さんの如く「死んで御出で」等と云ふ譯が無い。抑も「遺骨」は行進(march)しない。蛇足乍ら、筆者の伯父のように海戦で戦死した場合、遺骨その物の存在が不明である。
南北戦争(The Civil War)時の歌だが、米国では(同時代の他の歌も含め)いまだに歌われ、映画などにも使用されている。
・追記。
ここまで露骨なアピールをしているからには、第2次大戦時のように「Blitzkrieg」や「Coup de main」という事にはならないだろう……たぶん。
そう言えば、ウクライナの首都はここだった。
・更に追記。
「武器を取れ~、シトワイヤ~ン(Aux armes, Citoyens)」と言うのは映画『カサブランカ(Casablanca)』(1942年)の酒場(Rick's Cafe Americain)での事ではない。あちらは撮影所のセット内で作られた虚構だが、こちらは白日の下の現実である。
第六十八段 ― 2022年02月14日
よく聴きゃ違うがよく似てる曲が流れていた。
・「サム・スカンク・ファンク(Some Skunk Funk)」。
ブレッカー:ブラザーズ(Brecker Brothers)のアルバム『ヘヴィ・メタル・ビバップ(Heavy Metal Be-Bop)』(1978年)所収。作曲した兄ランディ(Randy Brecker)の著作権は存続している為譜面の掲載は不可。
・チャイコフスキー『交響曲第4番ヘ短調作品36』より第4楽章冒頭。
先日同曲同楽章に触れたが、こういうのを「セレンディピティ(serendipity)」と……言わないだろうな。
前者は何かのTV番組で後者は何かのTVCMだったと思うが曖昧模糊たる点に内心忸怩たるものがある。
第六十七段の補足の続き ― 2022年02月15日
ウクライナが交戦状態になれば必然的に原油価格が上昇する。映画『バルジ大作戦(Battle of the Bulge)』(1965年)を観ずとも明らかである。前大戦ほど「油の一滴は血の一滴」では無いかも知れないが。
それに伴い、生活費全体の価格も上昇する。木枯し紋次郎のごとく「It isn't my business」などと気取ってる場合では無い。これ位の情報は常に念頭に置かないと、胸を張って「家事を担っている」などと口幅ったい事は言えない。だからと言って、チャンドラー(Raymond Chandler、1888年-1959年)の小説に登場する私立探偵ジョン・ダルマス(John Dalmas)のように「Trouble is my business」などと意気がって何でも彼でも引き受ける訳にも行かないが。
今回は「石油」では無く「天然ガス」がポイントなのだろうか。やはり化石燃料からの脱却はなかなか難しいようだ。そう言えば『熱砂の秘密』も兵站(logistics)が物語の要だった。核融合炉の研究は現在どうなっているんだろう。
いずれにせよ、当今の戦争では電子機器をより高度に使いこなした方が圧倒的に有利だろう。『孫子(SunTzu, the Art of War)』にも「A.I.は勝つ」とある。
【HOSTILITES】Les hostilites sont comme les huitres, on les ouvre.
≪Les hostilites sont ouvertes≫ . Il semble qu'il n'y a plus qu'a se mettre a table.
【戦端】牡蠣の如く開くもの。
「戦端が開かれた」
あとはテーブルに着くのみ。
フローベール。