第五十九段2022年01月21日

【ACHILLE】Ajouter ≪aux pieds legers≫; cela donne a croire qu'on a
lu Homere.
【アキレス】「俊足なる」と付ければ、ホメーロスを読んだふりが出来る。

フローベール。

    又

(前略)「いや時々冗談を言ふと人が眞に受けるので大(おほい)に滑稽的美感を挑撥するのは面白い。先達てある學生にニコラス、ニックルベーがギボンに忠告して彼の一世の大著述なる佛國革命史を佛語で書くのをやめにして英文で出版させたと言つたら、其學生が又馬鹿に記憶の良い男で、日本文學會の演説會で眞面目に僕の話した通りを繰り返したのは滑稽であつた。所が其時の傍聽者は約百名許りであつたが、皆熱心にそれを傾聽して居(を)つた。夫からまだ面白い話がある。先達て或る文學者の居(ゐ)る席でハリソンの歴史小説セオファーノの話しが出たから僕はあれは歴史小説の中で白眉である。ことに女主人公が死ぬ所は鬼氣人を襲ふ樣だと評したら、僕の向ふに坐つて居(ゐ)る知らんと云つた事のない先生が、さうさうあすこは實に名文だといつた。それで僕は此男も矢張僕同樣此小説を訓んで居(を)らないといふ事を知つた」(後略)

『吾輩は猫である 一』より。


お馴染み迷亭君の台詞である。尤も第一回ではまだ「美学者」と呼ばれているのみで名は付いていない。「迷亭」という名(?)だか号(?)だかが判明するのは第二回からである。

前者は知ったかぶりする方法について、後者は知ったかぶりの受売りをして馬脚を露わした事に関して。
蛇足ながら、アキレスの形容フレーズに「神行太保」を加えれば『水滸伝』を読んだふりも出来る……かも知れない。

・おまけ。

コンスタンティノス11世パレオロゴス(1405年-1453年).。

・さらにおまけ。
七代目樽金(Tarquin the Proud、?年-紀元前495年)。