第五十八段の原文2022年01月20日

LES FOURMIS


Chacune d'elle ressemble au chiffre 3.

Et il y en a! il y en a!

Il y en a 333333333333... jusqu'a l'infini.

第五十九段2022年01月21日

【ACHILLE】Ajouter ≪aux pieds legers≫; cela donne a croire qu'on a
lu Homere.
【アキレス】「俊足なる」と付ければ、ホメーロスを読んだふりが出来る。

フローベール。

    又

(前略)「いや時々冗談を言ふと人が眞に受けるので大(おほい)に滑稽的美感を挑撥するのは面白い。先達てある學生にニコラス、ニックルベーがギボンに忠告して彼の一世の大著述なる佛國革命史を佛語で書くのをやめにして英文で出版させたと言つたら、其學生が又馬鹿に記憶の良い男で、日本文學會の演説會で眞面目に僕の話した通りを繰り返したのは滑稽であつた。所が其時の傍聽者は約百名許りであつたが、皆熱心にそれを傾聽して居(を)つた。夫からまだ面白い話がある。先達て或る文學者の居(ゐ)る席でハリソンの歴史小説セオファーノの話しが出たから僕はあれは歴史小説の中で白眉である。ことに女主人公が死ぬ所は鬼氣人を襲ふ樣だと評したら、僕の向ふに坐つて居(ゐ)る知らんと云つた事のない先生が、さうさうあすこは實に名文だといつた。それで僕は此男も矢張僕同樣此小説を訓んで居(を)らないといふ事を知つた」(後略)

『吾輩は猫である 一』より。


お馴染み迷亭君の台詞である。尤も第一回ではまだ「美学者」と呼ばれているのみで名は付いていない。「迷亭」という名(?)だか号(?)だかが判明するのは第二回からである。

前者は知ったかぶりする方法について、後者は知ったかぶりの受売りをして馬脚を露わした事に関して。
蛇足ながら、アキレスの形容フレーズに「神行太保」を加えれば『水滸伝』を読んだふりも出来る……かも知れない。

・おまけ。

コンスタンティノス11世パレオロゴス(1405年-1453年).。

・さらにおまけ。
七代目樽金(Tarquin the Proud、?年-紀元前495年)。

第六十段2022年01月22日

ウィリアム・シャトナー氏が無事に帰球(?)したことを寿いで。「Where No Man Has Gone Before」(TNG以降では「Where No One Has Gone Before」)とは言えないものの、「To Boldly Go」だった事は間違いない。
『宇宙大作戦(宇宙パトロール、TOS)』に使用された既知の楽曲から(話数は米国放映順通話数)。

・シーズン1第28話「危険な過去への旅(The City on the Edge of Forever)」→『Goodnight Sweetheart』(1931年)。
1929年に始まった世界恐慌後の1930年代へタイム・スリップしたという設定なので時代色を出したのだろう。以前働いていた場所で毎日の仕事終りはこの曲だった。インストゥルメンタルだったので歌詞は知らない。楽曲の著作権は存続しているようなので楽譜の掲載は不可。

・シーズン2第40話「宿敵クリンゴンの出現(Friday's Child)」→チャイコフスキー『交響曲第4番ヘ短調』第4楽章より。
ロシア系と言う設定のパーヴェル・チェコフ(ロシア語読みではチェーホフ)が加わった為だろう。演じているのはウォルター・ケーニッヒ(ケーニッグ、Walter Koenig)。「なぜ第4番?」と思ったら、この旋律は元々『白樺は野に立てり(野に立つ白樺)』と言うロシア民謡との由。
・シーズン3第59話「悪魔の弟子達(And the Children Shall Lead)」→『Ring a Ring o' Roses』。
またもやNursery Rhymes(マザー・グース)である。ウィキペディアに複数の楽譜が掲載されているが、手許にある音源はどのヴァージョンとも異なる。この旋律なら以前から聞き覚えがある。




第六十段(承前)2022年01月23日

今度は脚本に関して。
スター・トレックの脚本を執筆した作家も一人二人では無いようだ。名を知ってる作家のみ。

・リチャード・マシスン(Richard Matheson、1926年-2013年)。シーズン1『二人のカーク(the Enemy Within)』。
・ロバート・ブロック(Robert Bloch、1917年-1994年)。シーズン1『コンピューター人間(What Are Little Girls Made Of?)』シーズン2『惑星パイラスセブンの怪(Catspaw)』『惑星アルギリスの殺人鬼(Wolf in the Fold)』。
・シオドア・スタージョン(Theodore Sturgeon、1918年-1985年)。シーズン1『おかしなおかしな遊園惑星(Shore Leave)』シーズン2『バルカン星人の秘密(Amok Time)』。
・ハーラン・エリスン(Harlan Ellison、1934年-2018年)。シーズン1『危険な過去への旅(the City on the Edge of Forever)』。
・ノーマン・スピンラッド(Norman Spinrad)。シーズン2『宇宙の巨大怪獣(the Doomsday Machine)』。


原作として使用。

・フレドリック・ブラウン(Fredric Brown、1906年-1972年)。シーズン1『怪獣ゴーンとの対決(Arena)』。
短篇集『スポンサーから一言(Honeymoon in Hell)』(1958年刊)所収。訳題は「闘技場」。設定はほぼ原作を踏襲しているが、オチが異なる。スター・トレックらしいと言うか、ジーン・ロッデンベリー(Gene Roddenberry、1921年-1991年)らしい結末である。

スター・トレックは、ファンのみならずSF作家からの評価も高い事で知られる。シーズン1放映時、裏番組が強く(その中に『奥様は魔女(Bewitched)』もあった)視聴率的に苦戦し打切りが検討されている時、放映していたNBCに番組継続を求める投書が多く寄せられたらしい。その中には数々のSF作家の名もある。
既出の名以外では、ポール・アンダースン(Poul Anderson、1926年-2001年)、レスター・デル・レイ(Lester del Rey、1915年-1993年)、フィリップ・ホセ・ファーマー(Philip Jose Farmer、1918年-2009年)、フランク・ハーバート(Frank Herbert、1920年-1986年)、A・E・ヴァン・ヴォークト(Alfred Elton van Vogt, 1912年-2000年)など。

・追記(24日)

またもや重要な作家を落としていた。
アイザック・アシモフである。
科学エッセイ集『生命と非生命のあいだ(Is Anyone There?)』(1967年刊)所収の「現実の中への逃避」で『宇宙大作戦(宇宙パトロール、TOS)』に関して触れ(文中の番組名邦訳は『星の遍歴』)、「この中ではSFが真面目に取り扱われている」と記している。
『Dr.アシモフのSFおしゃべりジャーナル』という凄まじい訳題のエッセイ集(原題は『Asimov on Science Fiction』1981年刊)でも複数の章でスター・トレックに触れている。中でもミスター・スポックを擁護する文章(「なぜか悪者にされる科学者」)が面白い。さらに『劇場版スター・トレック(Star Trek: The Motion Picture)』(1979年)に関して幾つかの助言をした結果、「Special Science Consultant」としてエンドロールに名がクレジットされた事を誇らしげに書いている。
後日談として、『新スター・トレック(TNG)』のレギュラーであるアンドロイドのデータ少佐(Lieutenant Commander Data)は、「アシモフ博士」が考案した陽電子頭脳(positronic brain)を搭載していると言う設定。

もうひとり重要な作家を。
レイ・ブラッドベリである。
ブラッドベリが米国の特撮監督レイ・「コマ撮り」・ハリーハウゼン(Ray Harryhausen、1920年-2013年)と高校からの友人である事は有名だが、スター・トレックを作ったジーン・ロッデンベリーとも友人で、スター・トレックの脚本も頼まれていたが執筆には至らなかったらしい(理由は不明)。『劇場版スター・トレック』の撮影現場をブラッドベリが見学(?)している映像を観た記憶があるが、例によって確信は無い。


……それにしても「しろうるり」って、何だろう……。

第六十一段2022年01月26日

「ロシア」「歌」からの連想。

ムソルグスキー(1839年-1881年)に『蚤の歌』と言う歌曲がある。キリル文字は目に一丁字も無いので読み書き出来ない。所謂、もんも……ランシーなんて名の犬もいる(『ボートの三人男(Three Men in a Boat)』1889年)。
元になった詩はゲーテの『ファウスト 第一部』よりメフィストフェレスの歌。

  昔々王がゐた。
  大きな蚤を持つてゐた。
  自分の生ませた子のやうに
  可哀がつて飼つてゐた。
  或る時服屋を呼んで來た。
  服屋が早速遣つて來た。
  「此若殿の召すやうな
  上衣(うはぎ)とずぼんの寸を取れ。」

 森林太郎(鷗外)訳。

この後、勲章なども与える。同じ題材でベートーヴェンやベルリオーズなど複数の作曲家が歌曲を書いているらしいが、ムソルグスキーの作しか知らない(音楽の授業で聴いた)。
カウント・ベイシー楽団に「魔法の蚤(Magic Flea)」という曲がある(アルバム『Basie Straight Ahead』所収)。作・編曲はサミー・ネスティコ(Sammy Nestico、1924年-2021年)。この「flea」を、「free」「flare」と混同している人も結構いるようだ。
なお、「蚤の市(フリー・マーケット)」は英語の「flea market」の直訳であり、「free market」の意ではない。
「蚤のサーカス」なんて見世物も存在する。

ちなみに、こんな曲もある。
階名での歌唱を乞う。