人間と獅子 イソップ ― 2022年08月28日
人間と獅子 イソップ 楠山正雄訳
人間と獅子とが道づれになって旅をした。いろいろ話をしているうちに、二個(ふたり)は自分達の力自慢をはじめ、名々(めいめい)自分の方が力もあれば勇気もあると云い張った。こうしてお互いに真赤になって争いながら行くうちに、とある四つ角に、一人の人間が獅子を絞め殺している銅像が立っていた。その時人間は大得意で、
「ほらどうだ。あれを見ろ。あれを見ても俺の方が貴様よりも強いことが分かるだろう」と云うと、
「どっこい、仲々そうはいかない」と獅子は抑えて、「あれはほんのお前さん達人間の考えでできたものだ。若(も)し吾々獅子仲間がやはりああいう銅像を作るとすれば、きっと獅子が上になって人間が下に組み伏せられているに極まっている」と云った。
【訓言】 どんな問題にも二様の見方がある。