驢馬の悪ふざけ イソップ2022年08月24日

驢馬の悪ふざけ イソップ 楠山正雄訳

 驢馬が何と思ったか、或る日のこと屋根の天辺へ上って、むやみやたらとそこらを跳ねまわった。おかげで瓦をめくるやら、煙突をこわすやら大変なさわぎになった。
 主人はじめ家中の人達は、手に手に棒切れや竿を持って集まって来て、やっとのことで驢馬を下に追い落し、頭といわず尻尾といわず滅茶々々にどやしつけた。
 驢馬は半死半生の目に遭って厩(うまや)に押しこめられた。そこでつくづく溜息をついていうには、
「いやはやとんだことだった。俺が今日した通りのことを、昨日猿がやって見せたときには、家中引っくりかえって笑ったじゃないか。俺がそれをやったのがあの人達には面白くはないのか知らん。」

【訓言】 己れの分を知らぬものはたしなめられる。

猿と駱駝 イソップ2022年08月24日

猿と駱駝 イソップ 楠山正雄訳

 森の獣の大集会に猿が余興の舞踏を演じて満座の大喝采を博した。その拍手喝采の勢いがあまり盛んだったので駱駝(らくだ)が羨ましがり、自分も一番猿の真似をしてみんなにやんやと云われようと思い付いた。そこで駱駝はいきなり立ち上がって真中(まんなか)に躍り出し、めったやたらに舞踏をはじめたが、なんにせよあの胴体(ずうたい)でどたどた不格好に跳ねまわるのだから馬鹿々々しくって見られたものではなかった。到頭みんな寄ってたかってなぶりものにして外へ追い出してしまった。

【訓言】 徒らに他人の長所を真似るは愚かなり。


・前出の類話。
所謂『イソップ寓話』は、初めから一巻の書として企図されたのでなく個々の説話を後に纏めたものだから、同工異曲の話が幾つか存在する。