日本国憲法 前文 ― 2022年07月30日
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらを、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
・義務教育(地元の市立中学校)で教わった。無論すべてを暗記させられた訳では無い。
自国の基本法(constitutional law)くらいは知っておいても損はないだろう。他国(ロシア、ミャンマーその他)の基本法も知れば、いろいろ興味深いかも知れない。
河畔の悲劇 26 ― 2022年07月30日
二六、封筒の消印
プランタさんの話を聞き終ると、ルコックは卓子(テーブル)に向って、一枚の白紙に、鉛筆で種々(いろいろ)な奇妙な形を書きはじめた。彼は何もかも忘れたように夢中になって、稍(やや)しばらくそれをつづけていたが、やがて突然(だしぬけ)に起(た)ちあがった。多分最後の難問題について、解決を見出(みいだ)したのであろう。
彼はちらと時計を見て、
「もう二時ですね。私は三時から四時の間に、ゼンニイのことで、シャルマン夫人と会う約束がしてあるんだが、貴方もいらしって下さい。」
と、プランタさんを促(うなが)した。
「無論、お供します。」
「それでゼンニイの件がきまると、次は伯爵の探索です。そして今日中に形(かた)をつけてしまいましょう。」
「えっ、今日中に、そう何もかも出来ますかね――」
プランタさんは、びっくりした。
「神速(しんそく)は探偵術の第一義です。たった一時間の差で、一ケ月も手遅れになることは、珍しくありませんからね。明日になれば手遅れです。二十四時間以内に捕まらぬとすれば、策戦(さくせん)を変えなければなりません。私の三人の部下が、馬車を乗り廻して、家具屋を調べているので、私の見こみどおりに行けば、今から一時間、長くて二時間の後には、伯爵の隠れ家(が)がわかりますから、それによって直ぐに手筈をきめます。」
そういいながら定紋(じょうもん)入りの書簡箋(しょかんせん)を引きよせて、さらさらと簡単な手紙をしたためた。
「御覧なさい――これも部下への命令ですがね。こうしておけば大丈夫。」
その文言(もんごん)は、
ジョッブ君――
機敏の刑事六七名を率(ひき)い、マアチル街とラマルチーヌ街の交叉点の酒場にて、余の命令を待たれよ。
「何故此家(ここ)へ召(よ)ばないんですか。」
プランタさんが不審をうつと、
「無駄足を省くためです。ここに指定した場所は、我々がこれから出かけようとしているシャルマン夫人の家の近所で、伯爵の隠れ家にも近いんです。伯爵は多分、ノオトル・ダーム・ド・ロレットの附近に潜んでいる見当なので――」
「えっ、どうしてそれが判りますかね?」
探偵は、わかりきったことをと云わぬばかりに、にやりとして、
「一昨晩、私達が町長を見舞いに行ったとき、ロオランス嬢から来た手紙の封筒を、私がくすねて来ましたね。あれにはサン・ラザール郵便局の消印があったのです。つまり彼女は、伯母の家を出ると、かねての打合せどおり、伯爵の隠れ家へ行って、そこであの手紙を書いて、近所の郵便函(ばこ)へ入れたものです。彼女は伯爵が厳(きび)しいお尋ね者であるとは知る由(よし)もないから、わざわざ遠方へもって行って投函する理由(わけ)はありません。」
プランタさんは、少し極りがわるかった。封筒の消印というような簡単な事実に気づかなかったとは、不思議なくらいだが、しかし熱中するときは、却って灯台下(もと)暗しということになりがちなもので、プランタさんの場合もそれにちがいないのだ。
「それはそうと、先刻(さっき)の約束は大丈夫でしょうな。そんなに大勢の刑事を集めると、我々の目的の邪魔になりはしませんか。」
「私を信じて下さい。必ず成功するとはお請合(うけあ)い出来ませんが、出来るだけは試(や)ってみるつもりです。」
そういってから、ルコックは女中を呼んで、
「この手紙をジョッブにとどけてくれ。」
「わたしが持ってまいりましょうか。」
「いや、遣いに持たしてやれ。お前は家にいて、今朝出かけた者達が帰って来たら、直ぐにマアチル街の角(かど)の酒場へ来いと云ってくれ。」
それからルコックは、真黒な長い上衣(うわぎ)を着て、念入りに仮髪(かつら)を直した。
「旦那様は、今晩お帰宅(かえり)になりますか。」
「どうなるか分らん。」
「『あちら』から人が見えたら、どう申しましょう?」
ルコックの宅(うち)で「あちら」といえば、警視庁のことを指すのである。
「オルシバル事件の用で出かけたといってくれ。」
やがて身支度が出来ると、ルコックは五十恰好(かっこう)の上品な紳士に化けていた。何処から見ても、会社か然(しか)るべき店の支配人という風采で、金縁眼鏡にも、小腋(こわき)にかかえた蝙蝠傘にも、帳簿のにおいが沁みこんでいるようであった。
「さア、大急ぎで出かけましょう。」
彼は先に立って、奥の室から食堂の方へ出て来ると、そこにはグラアル刑事が、食事を済まして、端然と待ちかまえていた。
「ははあ、僕の葡萄酒はどうだね。自慢の酒なんだが――」
とルコックが声をかけた。
「頗(すこぶ)る上等です。すっかり頂いてしまいました。」
「それはよかったね。そんなら君も一緒に来たまえ。多分若い美人を一人、君にお預けする筈だが、君はその女をドミニ判事の許(ところ)へつれて行ってくれ。しかし油断をしてはならんぞ――敏捷(すばし)こい女だから、途中で胡魔化されないようにな。」
三人が出て行った後で、女中は例により、扉を厳重に閉めきった。
日本国憲法 第一九・二〇・二一条 ― 2022年07月30日
第一九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
第二〇条 ① 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
② 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
③ 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
第二一条 ① 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
② 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
第百二十九段 ― 2022年07月30日
COVID-19 の新しい変異株を「ケンタウロス」と呼ぶらしい。「キメラ」と言う言葉もあるが、これは「異質同体」の事だそうだ。
いずれもギリシャ神話に由来する。
ラテン文字では「Chimaera」「Chimera」など複数の表記があるらしい。読み方も「キメラ」「キマイラ」「キミーラ」など様々。
・以下伝聞。
漱石が英語の教師をしていた頃、この単語を英文和訳の試験文中に用いたそうだ。
「諸君」と訳した生徒がいたとの事。