第三十四段 ― 2021年11月11日
またもや TV の CM で既知の曲が流れていた。こんな旋律である。
歌詞(のうち一例)は以下の通り。
This old man, he played one,
He played knick-knack on my drum;
With a knick-knack paddywhack,
Give a dog a bone,
This old man came rolling home.
This old man, he played two,
He played knick-knack on my shoe;
With a knick-knack paddywhack,
Give a dog a bone,
This old man came rolling home.
This old man, he played three,
He played knick-knack on my tree;
With a knick-knack paddywhack,
Give a dog a bone,
This old man came rolling home.
This old man, he played four,
He played knick-knack on my door;
With a knick-knack paddywhack,
Give a dog a bone,
This old man came rolling home.
This old man, he played five,
He played knick-knack on my hive;
With a knick-knack paddywhack,
Give a dog a bone,
This old man came rolling home.
This old man, he played six,
He played knick-knack on my sticks;
With a knick-knack paddywhack,
Give a dog a bone,
This old man came rolling home.
This old man, he played seven,
He played knick-knack up on my Devon;
With a knick-knack paddywhack,
Give a dog a bone,
This old man came rolling home.
This old man, he played eight,
He played knick-knack on my gate;
With a knick-knack paddywhack,
Give a dog a bone,
This old man came rolling home.
This old man, he played nine,
He played knick-knack on my wine;
With a knick-knack paddywhack,
Give a dog a bone,
This old man came rolling home.
This old man, he played ten,
He played knick-knack on my hen;
With a knick-knack paddywhack,
Give a dog a bone,
This old man came rolling home
数え唄(counting rhyme)である。
所有している複数の音源ではメロディがついて実際に歌われている。メロディ・ラインは同じだが、歌詞が微妙に異なる。TVドラマ『刑事コロンボ』でも、主演のP・フォークが別の歌詞で歌っていた。ウィキペディアに掲載されているヴァージョンとも異なる。個人的には、「He playd knick-knack on my ~」というリフレインが統一しているこのミッチ・ミラー合唱団(Mitch Miller and the Gang)ヴァージョンが好きである。最後まで脚韻も踏んでいる。同ヴァージョンでは『Children's Marching Song』という曲名が附いているが、一般的に最初の1フレーズを取って『This Old Man』と呼ばれることが多いようだ。
元々は「口伝」であろうから、民話や民謡と同じく、メロディも歌詞も種々のヴァージョンがあって不思議はない。1コーラス目で「one」と「drum」が韻を踏んでいる所を見ると、元ネタは結構古いのかも知れない。
なお、「マザー・グース(Mother Goose)」というのは、元はペロー(Charles Perrault、1625年-1703年)の『鵞鳥おばさんのお話(Les Contes de la Mere l'Oye)』を英訳した時の書名だそうだ。ちなみに、ラヴェル(Maurice Ravel、1875年-1937年)に同書を題材にした作品がある。曲の内容は必ずしもペローの原作どおりでは無く、「美女と野獣」など他の作家の作品も混ぜているが。
なお、「マザー・グース(Mother Goose)」というのは、元はペロー(Charles Perrault、1625年-1703年)の『鵞鳥おばさんのお話(Les Contes de la Mere l'Oye)』を英訳した時の書名だそうだ。ちなみに、ラヴェル(Maurice Ravel、1875年-1937年)に同書を題材にした作品がある。曲の内容は必ずしもペローの原作どおりでは無く、「美女と野獣」など他の作家の作品も混ぜているが。
「マザー・グース」は主に米国での呼称で、英国では単に「子守唄(Nursery Rhyme)」と呼ばれているらしい。眠らせるためのみでは無く、遊び唄なども含め、文字通り子供をあやすための唄のようだ。そういう意味では「子守の唄」と直訳するよりも「わらべうた」と言う方が適切かも知れない。「song」ではなく「rhyme」とあるように、必ずしもメロディがついているとは限らず、単に呪文のように唱えるだけのものも多い。中にはストーリー仕立ての長篇(?)もある。
歌詞に戻ると、近年ではボブ・ディランも自作の歌詞で歌っている。まぁ、著作権的にも問題は無いだろうし、口伝であれば「原作者」や「原詞」を探索しても「the answer is blowin' in the wind」ということになるだろう。
歌詞に戻ると、近年ではボブ・ディランも自作の歌詞で歌っている。まぁ、著作権的にも問題は無いだろうし、口伝であれば「原作者」や「原詞」を探索しても「the answer is blowin' in the wind」ということになるだろう。
第三十五段 ― 2021年11月14日
数え唄『This Old Man(Children's Marching Song)』の続き、と言うより『刑事コロンボ』に関して。
TVドラマ『刑事コロンボ(Columbo)』で主演のP・フォーク(Peter Falk、1927年-2011年)が「歌っていた」と書いたが、厳密に言えば、第19話「別れのワイン(Any Old Port in a Storm)」中、口笛で吹いたのが最初である。なお、話数はパイロット版の2本も含む。即ちレギュラー放送第1話に当る「構想の死角(Murder by the Book)」を「第3話」とカウントしている。ちなみにこの回はほかに「コルコヴァード(Corcovado)」「パリの空の下(Sous le ciel de Paris)」などが劇中BGMとして流れる。実際に歌われたのは第26話「自縛の紐(An Exercise in Fatality)」中であった。但し、歌詞は筆者の知るどのヴァージョンとも微妙に異なる。その後第29話「歌声の消えた海(Troubled Waters)」では、鼻歌と口笛で披露している。この回はほかに「サマー・サンバ(So Nice)」「イパネマの娘(Garota de Ipanema)」などがBGMで流れ「ヴォラーレ(Nel blu, dipinto di blu)」がステージで歌われる。
それ以外の曲では、第32回「忘れられたスター(Forgotten Lady)」の後半で「スピーク・ロウ(Speak Low)」が効果的に使われていて、第36回「魔術師の幻想(Now You See Him)」ではステージ・ショウで「シャレード(Charade)」が歌われる。個人的には、「こんな曲が使われていたのか」という点も興味深い。
それにしても改めて『刑事コロンボ』を見直すと、『古畑任三郎』シリーズは、全体の構成のみならず個々のエピソードに対するオマージュ(?)にも溢れていると言えそうだ。
TVドラマ『刑事コロンボ(Columbo)』で主演のP・フォーク(Peter Falk、1927年-2011年)が「歌っていた」と書いたが、厳密に言えば、第19話「別れのワイン(Any Old Port in a Storm)」中、口笛で吹いたのが最初である。なお、話数はパイロット版の2本も含む。即ちレギュラー放送第1話に当る「構想の死角(Murder by the Book)」を「第3話」とカウントしている。ちなみにこの回はほかに「コルコヴァード(Corcovado)」「パリの空の下(Sous le ciel de Paris)」などが劇中BGMとして流れる。実際に歌われたのは第26話「自縛の紐(An Exercise in Fatality)」中であった。但し、歌詞は筆者の知るどのヴァージョンとも微妙に異なる。その後第29話「歌声の消えた海(Troubled Waters)」では、鼻歌と口笛で披露している。この回はほかに「サマー・サンバ(So Nice)」「イパネマの娘(Garota de Ipanema)」などがBGMで流れ「ヴォラーレ(Nel blu, dipinto di blu)」がステージで歌われる。
それ以外の曲では、第32回「忘れられたスター(Forgotten Lady)」の後半で「スピーク・ロウ(Speak Low)」が効果的に使われていて、第36回「魔術師の幻想(Now You See Him)」ではステージ・ショウで「シャレード(Charade)」が歌われる。個人的には、「こんな曲が使われていたのか」という点も興味深い。
それにしても改めて『刑事コロンボ』を見直すと、『古畑任三郎』シリーズは、全体の構成のみならず個々のエピソードに対するオマージュ(?)にも溢れていると言えそうだ。
第十七段の訂正 ― 2021年11月15日
アシモフの短篇の訳題は「Ph は Phony の Ph」では無く「贋物(Phony)の Ph」だった。
訳者の池央耿(いけ・ひろあき)氏にお詫びする。失礼しました。
連作短篇集『黒後家蜘蛛の会1(Tales of the Black Widowers)』(1974年)に収められている。R・ブラッドベリの短篇集『ウは宇宙船のウ(R is for Rocket)』(1962年)や『スは宇宙のス(S is for Space)』(1966年)に引きずられてしまった。
原題は「Ph as in Phony」だから、作者本人が述べているように、ローレンス・トリート(Lawrence Treat、1903年-1998年)のミステリー作品『被害者のV(V as in Victim)』(1945年)や『殺人のH(H as in Homicide)』(1964年)を意識していたらしい。
ひょっとしたら、「SFでは無くミステリーだ」という意識が作者にあったのかも知れない。筆者の考えすぎ(「穿ちすぎ」では無い。未熟なトンネル掘削技師じゃあるまいし)かも知れないが。
・第十四段の付記。
ブラッドベリの「群集(The Crowd)」は短篇集『十月はたそがれの国(The October Country)』(1955年)に収められている、ご参考まで。
第三十六段 ― 2021年11月16日
『刑事コロンボ』と言えば、ヘンリー・マンシーニ(Henry Mancini、1924年-1994年)の作曲したテーマ曲を思い出す人も多いだろう。譜面を載せたいところだが、マンシーニの著作権は存続している筈だからそうも行かない。日本では『刑事コロンボのテーマ』として知られるが、本来は『刑事コロンボ』を含む複数の作品を放映していた『NBCミステリー・ムービー』という番組枠自体のテーマ曲だったそうだ。そう考えると、第36話「魔術師の幻想」でステージ・ショーとして歌われたマンシーニ作曲の『シャレード』は楽屋落ちと言えるかも知れない。
もっと露骨な楽屋落ちが、第38話「ルーサン警部の犯罪(Fade in to Murder)」にある。第15話「溶ける糸("A Stitch in Crime)」のレナード・ニモイに続きウィリアム・シャトナーの出演であるのはともかく、コロンボの部下役で同じく『スター・トレック』の「ミスター・チェコフ」ことウォルター・ケーニッグも出演している。さらに凄いのは、コロンボが撮影所(?)へ行くと、映画『ジョーズ(Jaws)』(1975年)で使用されたロボット鮫がいるというオチである。ご存じの方も多いだろうが、『刑事コロンボ』本放送第1話(通算第3話、本国での放映日は1971年9月15日)の監督は、TVディレクターとしてデビュー2年目の若きスティーヴン・スピルバーグ(Steven Spielberg)である。その後、TV『激突!(Duel)』(1971年)、劇場第1作『続・激突! カージャック(The Sugarland Express)』(1974年)ときて、『ジョーズ』の大ヒットとなるわけだ。
手許の『This Old Man』に関して調べてみると、ミッチ・ミラー&ザ・ギャングの場合、1~5番はニ長調、6~10番は短2度上げて変ホ長調、The Nursery Rhyme Playersというグループの場合、1~5番はイ長調、6~10番は短3度上げてハ長調へとそれぞれ転調する。なにしろ1~10番まで同じメロディだから、多少は工夫しないともたないんだろう。ボブ・ディランのみは転調せず、最初から最後までハ長調のままである。つくづく無愛想な男だ。まぁ、原曲の素朴な精神(?)を尊重しているとも言えるが。
もっと露骨な楽屋落ちが、第38話「ルーサン警部の犯罪(Fade in to Murder)」にある。第15話「溶ける糸("A Stitch in Crime)」のレナード・ニモイに続きウィリアム・シャトナーの出演であるのはともかく、コロンボの部下役で同じく『スター・トレック』の「ミスター・チェコフ」ことウォルター・ケーニッグも出演している。さらに凄いのは、コロンボが撮影所(?)へ行くと、映画『ジョーズ(Jaws)』(1975年)で使用されたロボット鮫がいるというオチである。ご存じの方も多いだろうが、『刑事コロンボ』本放送第1話(通算第3話、本国での放映日は1971年9月15日)の監督は、TVディレクターとしてデビュー2年目の若きスティーヴン・スピルバーグ(Steven Spielberg)である。その後、TV『激突!(Duel)』(1971年)、劇場第1作『続・激突! カージャック(The Sugarland Express)』(1974年)ときて、『ジョーズ』の大ヒットとなるわけだ。
手許の『This Old Man』に関して調べてみると、ミッチ・ミラー&ザ・ギャングの場合、1~5番はニ長調、6~10番は短2度上げて変ホ長調、The Nursery Rhyme Playersというグループの場合、1~5番はイ長調、6~10番は短3度上げてハ長調へとそれぞれ転調する。なにしろ1~10番まで同じメロディだから、多少は工夫しないともたないんだろう。ボブ・ディランのみは転調せず、最初から最後までハ長調のままである。つくづく無愛想な男だ。まぁ、原曲の素朴な精神(?)を尊重しているとも言えるが。
第三十七段 ― 2021年11月19日
「All the world's a stage, And all the men and women merely players」William Shakespeare。
「人間世界は悉く舞台です、さうしてすべての男女が俳優です」(坪内逍遙訳)――『お気に召すまま(As You Like It)』第二幕第七場。
「すべての人間は単なるプレイヤーに過ぎない」という点は同感である。
但し、プレイヤーである以上、伎倆の巧拙があることは否めないし、結果を他者から云々されるのも仕方がないだろう、気にするかどうかは兎も角。いずれにせよ「合理的な基礎トレの反復」が不可欠なことは言うまでもない。如何なる「競技」や「楽器」のプレイヤーにせよ。
今迄「この人は凄い」と思ったプレイヤーは多数いるが、ひときわ驚いたのは(表現力・行動力を含めて)アウトドア・スポーツの「野茂英雄」(投手)「イチロー」(野手)、インドア・スポーツの「羽生善治」(棋士)だった。この人たちを越えるプレイヤーは当分現れないだろうと思っていたが、豈図らんや。
「人間世界は悉く舞台です、さうしてすべての男女が俳優です」(坪内逍遙訳)――『お気に召すまま(As You Like It)』第二幕第七場。
「すべての人間は単なるプレイヤーに過ぎない」という点は同感である。
但し、プレイヤーである以上、伎倆の巧拙があることは否めないし、結果を他者から云々されるのも仕方がないだろう、気にするかどうかは兎も角。いずれにせよ「合理的な基礎トレの反復」が不可欠なことは言うまでもない。如何なる「競技」や「楽器」のプレイヤーにせよ。
今迄「この人は凄い」と思ったプレイヤーは多数いるが、ひときわ驚いたのは(表現力・行動力を含めて)アウトドア・スポーツの「野茂英雄」(投手)「イチロー」(野手)、インドア・スポーツの「羽生善治」(棋士)だった。この人たちを越えるプレイヤーは当分現れないだろうと思っていたが、豈図らんや。
むろん、「大谷翔平」(ベースボール・プレイヤー)と「藤井聡太」(将棋プレイヤー)である。
同じプロのプレイヤーから「化け物」「怪物」と言われることも共通している。藤井聡太は、まだ「野獣(beast)」とは呼ばれていないようだが。ともあれ恐れ入谷の鬼子母神である。
やはり長生きはするもんだ。これだから中々人間はやめられない。
同じプロのプレイヤーから「化け物」「怪物」と言われることも共通している。藤井聡太は、まだ「野獣(beast)」とは呼ばれていないようだが。ともあれ恐れ入谷の鬼子母神である。
やはり長生きはするもんだ。これだから中々人間はやめられない。