本日の冒頭の2行 ― 2025年11月17日
ホフマン「胡桃割りと鼠の王様」永井照徳訳。
十二月の二十四日の丸一日衛生顧問官シュタールバウムさんの子供達は中央の部屋に入ることは許されなかった。その隣りの大広間へは尚のことであった。裏部屋の隅に蹲(うずくま)ってフリッツとマリーとが座っていた。夕暮も濃くなって来た。何時もこの日はそうなのだが、灯を持って来て貰えないので、彼等は本当に怖ろしくなって来た。フリッツは極く内緒で妹に(妹のマリーはやっと七つになったばかりだった)小声で囁いた。「朝早くから閉切った室の中で、がたがたごとごとといって、そっと叩いている音がきこえる」と。その上一寸前に、大きな箱を腕にかかえて廊下をこっそり通った小さな怪しい男は、てっきり名付親のドロッセルマイエルに違いないって云うことを知っているのだと打明けた。そこでマリーは悦(よろこ)んで小さな手を打って云った。
「まあ、一体ドロッセルマイエル小父(おじ)さんは妾等(わたしら)にどんな素敵なものを作ってくれたんでしょう。」
・原作の刊行は 1816年。この訳は 1936(昭和11)年。
原作はあくまでも「児童文学」である。現在では、より読みやすい訳が複数ある。
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